第17章 一週間で毛が消えた日――境界線で聞いた「声」

1週間で、私の全身から毛が消えた──25年前、極限状態の私に起きた「異常事態」の記録

【導入】

それは、今から約25年前のことです。

たった1週間のうちに、私の体から「毛」という毛がすべて抜け落ちました。

頭髪はもちろん、眉毛も、まつ毛も。

昨日までそこにあったはずの自分が、音を立てて崩れていくような感覚。

鏡の中に映る「誰だかわからない男」を前に、私はただ立ち尽くすしかありませんでした。

始まりは、ほんの些細な違和感でした。

指で髪をすくうたびに、驚くほどの毛束が指の間に残る。

「少し疲れているだけだろうか」

そんな根拠のない楽観は、数日後に訪れた理髪店で打ち砕かれます。

「うわっ、これ……何、これ!?」

理髪店の店主が上げた奇声。

櫛を通すたびに、ごっそりと抜け落ちていく髪の毛。

その時、私の中に走ったのは、得体の知れない「恐怖」でした。

しかし、これはまだ、その後に続く地獄の入り口に過ぎませんでした。

毛が抜け落ちると同時に、私の脳内には「あるはずのない音」が響き始めたのです。

壁を越えて、誰かが近くにいることが判りさえすれば、直接頭の中に流れ込んでくる、他人の悪意に満ちた声。

目眩で文字すら読めなくなり、仕事も日常も崩壊していく中で、私は必死に、生き続けました。

これは、医学的には「軽い心身症」という一言で片付けられた、ある男の壮絶な再生の記録です。

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