1週間で、私の全身から毛が消えた──25年前、極限状態の私に起きた「異常事態」の記録
【導入】
それは、今から約25年前のことです。
たった1週間のうちに、私の体から「毛」という毛がすべて抜け落ちました。
頭髪はもちろん、眉毛も、まつ毛も。
昨日までそこにあったはずの自分が、音を立てて崩れていくような感覚。
鏡の中に映る「誰だかわからない男」を前に、私はただ立ち尽くすしかありませんでした。
始まりは、ほんの些細な違和感でした。
指で髪をすくうたびに、驚くほどの毛束が指の間に残る。
「少し疲れているだけだろうか」
そんな根拠のない楽観は、数日後に訪れた理髪店で打ち砕かれます。
「うわっ、これ……何、これ!?」
理髪店の店主が上げた奇声。
櫛を通すたびに、ごっそりと抜け落ちていく髪の毛。
その時、私の中に走ったのは、得体の知れない「恐怖」でした。
しかし、これはまだ、その後に続く地獄の入り口に過ぎませんでした。
毛が抜け落ちると同時に、私の脳内には「あるはずのない音」が響き始めたのです。
壁を越えて、誰かが近くにいることが判りさえすれば、直接頭の中に流れ込んでくる、他人の悪意に満ちた声。
目眩で文字すら読めなくなり、仕事も日常も崩壊していく中で、私は必死に、生き続けました。
これは、医学的には「軽い心身症」という一言で片付けられた、ある男の壮絶な再生の記録です。

